最新更新日付 2023年3月1日

行政書士・土地家屋調査士 寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
国家資格:行政書士、土地家屋調査士。
取扱い分野:法定相続情報証明制度など相続関連手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続関連業務(法定相続情報一覧図等)を行ってます。
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法定相続情報証明制度とは、相続手続きをする際に、
各金融機関や法務局などで必要な戸籍謄本類のやり取りを、
軽減することができる制度です。
法定相続情報証明制度を利用することで、
銀行預金や保険金、株や不動産などの相続手続きが、
より簡単で速くなり、相続人の負担軽減につながります。
そこで、法定相続情報証明制度とは何かについて、
相続専門の行政書士が、具体的にわかりやすく解説いたします。
この記事を閲覧することで、
法定相続情報証明制度の全容がすべてわかります。
法定相続情報証明制度とは?
銀行預金や保険金、株や不動産の相続手続きでは、
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本類と、
相続人全員の戸籍謄本類などの原本1セットの提出を求められます。
以前は、下図のように、相続手続き先の機関に順番に提出して、
その都度、戸籍謄本類の原本を返却してもらう方法により、
戸籍謄本類の原本1セットで各手続きを進めていくのが普通でした。

ただ、提出した戸籍謄本類の原本1セットについては、
相続手続き先の機関ごとに書類審査が行われ、
通常、書類審査が終わるまで返却を待つ必要があるため、
その分手間と時間がかかることがあります。
もちろん、各相続手続きを同時に進めたい場合は、
必要な戸籍謄本類を数セット用意すれば可能ですが、
戸籍代が多くかかってしまいます。
そこで、そのような不便を解消するために新しくできた制度が、
2017年5月29日からスタートした法定相続情報証明制度なのです。
法定相続情報証明制度を利用することにより、
相続手続きを行う機関ごとへの戸籍謄本類の提出を、
省略することが可能となります。
具体的には、相続手続きに必要な戸籍謄本類の原本1セットと、
法定相続情報一覧図、申出書などを法務局に提出することで、
「法務局の認証文付き法定相続情報一覧図」を、複数通交付してもらえます。

「法務局の認証文付き法定相続情報一覧図」とは、
わかり易く言えば、相続手続きに必要な戸籍謄本類の提出を、
「法務局の認証文付き法定相続情報一覧図」1枚の提出に、
代えることができるというものです。
たとえば、銀行などの相続手続き先が4か所の場合、
法務局から「法務局の認証文付き法定相続情報一覧図」を、
複数枚(たとえば4枚)発行してもらいます。
そして、戸籍謄本類の原本1セット提出の代わりに、
「法務局の認証文付き法定相続情報一覧図」1枚の提出により、
それぞれの相続手続きを同時に進めることが可能となるのです。

この「法務局の認証文付き法定相続情報一覧図」は、
必要な枚数分を法務局から無料で交付・再交付してもらえます。
相続手続き先が数ヶ所ある場合や、
出来るだけ相続手続き全体を早く済ませたい場合に、
とても便利な制度となっているのです。
法定相続情報証明制度に対応している手続きの一覧
法定相続情報証明制度は、次のすべての手続きに対応しています。
- 銀行預金の相続手続き
- 故人の銀行預金の口座調査や残高証明書取得の手続き
- 保険金の相続手続き
- 年金関係の手続き(令和2年10月26日から開始)
- 株や投資信託の相続手続き
- 故人の証券口座の残高証明書取得の手続き
- 不動産(土地・家屋・マンション)の相続手続き
- 自動車の相続手続き
- 相続税の申告手続き
- 遺言書の検認手続き
このように、法定相続情報証明制度は、
ほとんどの相続関連手続きに対応しているのです。
法定相続情報証明制度は誰でも利用できる?
法定相続情報証明制度は、誰でも利用できるわけではありません。
法定相続情報証明制度を利用するためには、
被相続人(亡くなった方)と法定相続人全員が、
日本国籍を有していることが必要です。

つまり、日本国民でなければなりません。
なぜなら、相続関係者の中に、日本国籍以外の人がいると、
その人の戸籍謄本類を取得することができないため、
制度を利用することができないのです。
ただ、日本国民で単に海外在住の相続人がいる場合には、
戸籍謄本類を取得することは可能なので、
制度の利用に問題はありません。
そして、法定相続人の内の1人や、その代理人であれば、
法定相続情報証明制度を利用できるのです。
法定相続情報証明制度を利用する必要のない人
次の内、どれか1つでも当てはまる人は、
法定相続情報証明制度を利用する必要がないと言えます。
- 亡くなった方の財産が1つの銀行口座のみの方
- 相続放棄をされる方
法定相続情報証明制度を利用した方が良い人
次の内、どれか1つでも当てはまる人は、
法定相続情報証明制度を利用した方が良いと言えます。
- 複数の銀行に亡くなった方の口座がある方
- 銀行預金、保険金、年金関係、株、不動産、自動車など、遺産が複数ある方
- 銀行預金や株などの残高または口座の有無を事前に調べる必要のある方
- 相続税の申告が必要になりそうな方 (相続税の申告は、遺産総額が3000万円+法定相続人の数×600万円を超える場合にのみ必要になります。)
また、制度の利用を自分で行う場合の具体的な手順については、
「法定相続情報一覧図を自分で取得する方法」を参照ください。
法定相続情報証明制度の必要書類
法定相続情報証明制度で必要な書類には、
必ず用意する書類と、必要になる場合がある書類があります。
まず、必ず用意する書類は、次のすべての書類です。
- 被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本類(除籍謄本等)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 法定相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本
- 申出人の住所と氏名を確認できる公的書類
→運転免許証又は個人番号カードのコピー、住民票の写し等。 - 法定相続情報一覧図
- 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
次に、必要になる場合がある書類としては、次の書類です。
- 相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し又は戸籍の附票)
→法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合に必要。 - 委任状や、親族関係がわかる戸籍謄本又は資格者代理人の身分証の写し
→代理人が申出の手続きをする場合に必要。
申出書の記載例や様式のダウンロード、申出書の書き方は、
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」で、
くわしく解説しています。
法定相続情報一覧図のケース毎の見本や作成方法は、
「法定相続情報一覧図とは?」、
「法定相続情報一覧図の見本とテンプレート集」、
「法定相続情報一覧図の作成方法・手書きOK?」で、
それぞれくわしく解説しています。
出生から死亡までの戸籍謄本等についてや
戸籍の取り方、戸籍が廃棄されていた場合については、
「出生から死亡までの戸籍謄本とは?」でくわしく解説しています。
法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載した場合と、
住所を記載しなかった場合の違いについては、
「法定相続情報一覧図に住所の記載は必要?」を参照下さい。
委任状の様式と記載例、様式のダウンロード、
委任状が無効にならないための4つの注意点については、
「法定相続情報証明制度の委任状の様式と記載例」を参照ください。
以上が、制度の利用で必ず用意する6つの書類と、
提出が必要になる場合がある3つの書類です。
なお、法定相続情報証明制度の必要書類については、
「法定相続情報証明制度の必要書類」で、
くわしく解説しています。
実は、提出された必要書類の審査が法務局内で行われるため、
通常、1週間程度の審査時間がかかります。
書類審査が完了すれば、法務局から連絡がありますので、
連絡があり次第、窓口に行くと、
「法定相続情報一覧図の写し」などをもらうことができるのです。
制度の利用を自分で行う場合の具体的な手順と流れについては、
「法定相続情報一覧図を自分で取得する方法」で、
くわしく解説しています。
「法定相続情報一覧図の写し」については、
「法定相続情報一覧図の写しとは?」を参照ください。
そのため、法定相続情報証明制度に必要な書類を、
郵送で法務局に提出して、書類審査後に、
法務局から郵送で返送してもらう方法をおすすめします。
郵送による制度の利用方法については、
「法定相続情報証明制度の利用を郵送で行う方法」で、
くわしく解説しています。
制度利用の手続き先・手数料・手続きにかかる日数は?
法定相続情報証明制度の手続き先は?

法定相続情報証明制度の利用手続き先は法務局です。
ただし・・・
ただし、法務局ならどこの法務局でも良いというわけではありません。
制度の手続き先は、次の4つの法務局(登記所)の内から、
申出人が任意で選択することができます。
- 被相続人(亡くなった方)の最後の本籍地を管轄する法務局
- 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
- 申出人の住所地を管轄する法務局
- 被相続人名義の不動産の所在地を管轄する法務局
つまり、上記4つのどれかに該当する法務局なら、
どこの法務局でも良いということです。
法定相続情報証明制度の手続き先については、
「法定相続情報証明制度の手続き先」で、
くわしく解説しています。
法定相続情報証明制度の手数料は?

法定相続情報証明制度の利用自体には、
手数料はかかりません。ただし・・・
ただし、制度の利用に必要な戸籍謄本等は、
市区町村の役所から発行してもらうため手数料がかかります。
また、郵送で法務局に書類を提出して、
「法定相続情報一覧図の写し」などの書類を郵送で受取る場合、
発送返送の郵送料がかかります。
もし、制度の利用手続きを代理人に依頼した場合、
利用手続きの手間と時間から解放されますが、
代行料金がかかります。
法定相続情報証明制度の利用でかかる手数料については、
「法定相続情報証明制度の手数料」で、
くわしく解説しています。
法定相続情報証明制度の手続きにかかる日数は?
制度の利用に必要な書類を法務局に提出後、
約1週間~10日程度で、
「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
法務局の窓口で書類を提出した場合も、
郵送で法務局に書類を提出した場合も、
書類提出後にかかる日数はほぼ同じです。
なぜなら、提出された書類を法務局内で審査したり、
「法定相続情報一覧図の写し」の交付には、
どうしても1週間~10日程度の日数がかかるからです。
なお、郵送で法務局に書類を提出したり、
「法定相続情報一覧図の写し」などの受取りを郵送で行う場合、
郵送日数もプラスして考えておく必要があります。
郵送による制度の利用方法については、
「法定相続情報証明制度の利用を郵送で行う方法」で、
くわしく解説しています。
法定相続情報証明制度の手続きは代理人でもできる?

代理人でも制度の利用手続きができます。
ただ、代理人になれるのは・・・
代理人になれるのは、次の1~3のいずれかに該当する人のみです。
- 申出人の法定代理人
- 相続人の親族
- 代理人になれる資格者(専門家)
まず、「1.申出人の法定代理人」というのは、
申出人が未成年者であった場合に、
両親などの親権者や未成年後見人のことです。
もし、申出人が成年被後見人になっていれば、
成年後見人や保佐人、補助人も法定代理人に該当します。
次に、「2.相続人の親族」というのは、
相続人の六親等内の血族と、相続人の配偶者、
相続人の三親等内の姻族のことです。
血族は血のつながりがある人達で、
姻族はそれぞれの配偶者のことです。
次に、「3.代理人になれる資格者(専門家)」としては、
行政書士、土地家屋調査士、司法書士、弁護士、
税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士のことです。
上記のどの資格者(専門家)も、
代理人になれる国家資格者ですので、
手続きのすべてを安心して依頼することができます。
しかし、資格者(専門家)によっては、
法定相続情報証明制度の代理人業務をしていない人もいるので、
制度の手続き業務をしている専門家に依頼する必要があります。
なお、法定相続情報証明制度の代理人については、
「法定相続情報証明制度の代理人は?」で、
くわしく解説しています。
以上、法定相続情報証明制度の全容について解説致しました。
法定相続情報証明制度の利用でお困りの方は、
簡単な解決方法はこちら⇒「法定相続情報証明制度の利用で困っていませんか?」
法定相続情報証明制度の利用でお困りのあなたへ
当サイトでは、具体的に次の3つのお困りの状況によって、
それぞれ簡単に解決することが可能です。
【関連記事】
亡くなった方の銀行預金の相続手続きでは、
銀行に提出する相続手続き書類の作成だけでなく、
相続に必要な除籍謄本や原戸籍等の収集作業も必要となり、
必要書類が煩雑で、必要書類をそろえるだけでも大変です。
しかし、相続について全国対応の専門家に依頼することで、
基本的にあなたは、委任状等の書面に署名押印をして、
ご返送いただくのみとなります。(メールと郵送のみで可能)
相続について全国対応の専門家に依頼するので安心でき、
手間がかからず時間の節約にもなります。
銀行預金の相続でお困りの方は、
今すぐこちらへ⇒銀行の相続手続きに困っていませんか?
(もし、不動産や株の相続があっても、引き続き依頼ができるので安心です)
法定相続情報証明制度は今も利用できる?
法定相続情報証明制度は、
平成29年5月29日から開始した制度で、
もちろん、令和3年の今現在も利用できる制度です。
「法定相続情報証明制度」について
平成29年5月29日(月)から,全国の登記所(法務局)において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。
引用元:“「法定相続情報証明制度」について”. 法務局.2020年10月26日更新.http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html, (閲覧日 2021-02-13)
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