この記事の監修者

行政書士・土地家屋調査士 寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
保有資格:行政書士、土地家屋調査士。
取扱い分野:法定相続情報証明制度など相続関連手続き全般。

経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
行政書士・土地家屋調査士のプロフィールはこちら

このページでは、法定相続情報一覧図の原本還付について、
次の3つの疑問に対する答えを、
相続専門の行政書士がわかりやすく解説いたします。

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この記事を閲覧することで、
法定相続情報一覧図の原本還付がすべてわかります。

法務局から法定相続情報一覧図は原本還付できる?

まず、法定相続情報一覧図とは、下図1のような書面のことです。

法定相続情報一覧図の例
(図1:法定相続情報一覧図の例)

法定相続情報一覧図は原本還付できません。

なぜなら、法定相続情報一覧図は、
法務局で備える法定相続情報一覧図つづり込み帳に、
作成の年の翌年から5年間保存することが、
不動産登記規則第28条の2で決められているからです。

不動産登記規則第28条の2 
次の各号に掲げる帳簿の保存期間は、当該各号に定めるとおりとする。

六 法定相続情報一覧図つづり込み帳 作成の年の翌年から五年間

引用元:e-Gov法令検索. 「平成十七年法務省令第十八号不動産登記規則」. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018_20210401_503M60000010014, (参照 2021-7-20)

法定相続情報証明制度を利用する場合、
法定相続情報一覧図などの必要書類を、
申出人 又は 代理人から法務局に提出することになります。

その際、提出された法定相続情報一覧図を法務局がチェックし、
内容に問題がなければ、
その法定相続情報一覧図をスキャン(データで取込み)します。

その後、スキャンした法定相続情報一覧図の下部に、
法務局の認証文、法務局名、登記官の氏名などを追記してから、
法務局の専用用紙で印刷した書面を、
「法定相続情報一覧図の写し」として申出人に交付するのです。

そして、法定相続情報一覧図は、法務局で適正に保管するため、
法定相続情報一覧図つづり込み帳に綴じて、
つづり込み帳の作成の年の翌年から5年間保存されます。

「法定相続情報一覧図の写し」の再交付の際に、
法務局が必要になるからです。

もし、その5年間の保存期間の間に、
「法定相続情報一覧図の写し」の再交付の申出があれば、
保存している法定相続情報一覧図を法務局が使用して、
「法定相続情報一覧図の写し」の再交付をすることになります。

ちなみに、法定相続情報一覧図と、
「法定相続情報一覧図の写し」は、異なる書面です。

その違いと原本還付については、このページの下記、
銀行などの相続手続き先から法定相続情報一覧図は原本還付できる?
でわかりやすく解説しています。

また、法定相続情報一覧図など提出書類の原本還付については、
下記「法定相続情報証明制度の提出書類は原本還付できる?
をご確認ください。

法定相続情報証明制度の提出書類は原本還付できる?

法定相続情報証明制度を利用する場合、
いくつかの必要書類を法務局に提出することになります。

ただ、提出書類には、原本還付してもらえる書類と、
原本還付されない書類があります。

そこで、それぞれ一覧にしましたので、ご確認下さい。

法務局に提出する書類の内、原本還付してもらえる書類一覧
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(全部事項証明書)
  • 被相続人の最後の住所を証明する書面(住民票の除票又は戸籍の附票)
  • 相続人の戸籍謄本又は戸籍抄本
  • 相続人の住所を証明する書面(住民票の写し又は戸籍の附票)
  • 代理人の権限を証明する書面(委任状や戸籍等)

上記の内、代理人の権限を証明する書類以外は、
原本還付について何もしなくても、
法務局から原本を戻してもらえます。

しかし、代理人の権限を証明する書類については、
原本をコピーして、そのコピーの方に代理人が、
「原本と相違ない」旨と、署名または記名押印をして、
法務局に提出があった場合のみ、原本還付されることになります。

次に、原本還付されない書類の一覧です。

法務局に提出する書類の内、原本還付されない書類一覧
  • 法定相続情報一覧図
  • 申出書
  • 申出人の住所及び氏名の記載された市区町村その他の公務員が職務上作成した証明書(本人確認書類)

法定相続情報一覧図が原本還付されない理由については、
上記「法務局から法定相続情報一覧図は原本還付できる?」で、
ご説明しているとおりです。

なお、法務局への提出が必要な書類については、
法定相続情報証明制度の必要書類を徹底解説!」で、
1つ1つくわしく解説しています。

銀行などの相続手続き先から法定相続情報一覧図は原本還付できる?

まず、銀行などの相続手続き先に提出するのは、
下図2のような「法定相続情報一覧図の写し」という書面です。

法定相続情報一覧図の写しの例
(図2:法定相続情報一覧図の写しの例)

「法定相続情報一覧図の写し」には、
下の方に法務局の認証文と、法務局名、登記官の氏名、
法務局の印が押されています。

逆に、法定相続情報一覧図というのは、下図3のように、
法務局の認証文や、法務局名、登記官の氏名、
法務局の印などが記載される前のものを言います。

法定相続情報一覧図の例
(図3:法定相続情報一覧図の例)

つまり、法務局の印等が無いこの状態の法定相続情報一覧図を、
銀行などの相続手続き先に提出しても、
戸籍謄本等の代わりにはなりません。

銀行や保険金、株や不動産の相続手続き先には、
「法定相続情報一覧図の写し」の方を各1枚提出することで、
戸籍謄本等の原本の提出は必要なくなるのです。

「法定相続情報一覧図の写し」は、
通常、原本還付してもらえます。

銀行などの相続手続き先では、
提出した「法定相続情報一覧図の写し」の原本を戻してもらえます。

ただ、手続き先から原本還付が必要か聞いてきてくれる場合と、
聞いてこない場合がありますので、原本還付が必要な場合は、
原本還付してほしい旨を、手続き先の担当者に伝える必要があります。

そして、銀行や証券会社が相続手続き先の場合は、
手続き先の方でコピーを取り、
「法定相続情報一覧図の写し」の原本を戻してもらえるのです。

ただし、不動産の相続手続き(相続登記)では、
原本還付の方法が決められています。

不動産の相続手続き(相続登記)で、
「法定相続情報一覧図の写し」を法務局に提出した場合、
次のように原本還付をしてもらうことになります。

まず、申請人が「法定相続情報一覧図の写し」をコピーして、
その余白に「これは原本と相違ない」旨を記入して、
申請人の署名 または 記名押印をします。

そして、不動産の相続手続き書類(相続登記書類)と一緒に、
原本とコピーを法務局に提出すれば、
「法定相続情報一覧図の写し」の原本を戻してもらえるのです。

ただ、そもそも「法定相続情報一覧図の写し」を、
相続手続き先の数だけ交付してもらっていれば、
原本還付をしてもらう必要がないと言えます。

なぜなら、「法定相続情報一覧図の写し」は、
少なくとも相続手続き先の予定の数だけ、
法務局から発行してもらえる書面だからです。

「法定相続情報一覧図の写し」については、
法定相続情報一覧図の写しとは?」で、
くわしく解説しています。

また、「法定相続情報一覧図の写し」が足りない場合、
原本還付してもらう方法もありますが、
足りない分は、法務局から何通か再交付してもらうことも可能です。

「法定相続情報一覧図の写し」の再交付については、
法定相続情報一覧図の写しの再交付の方法」をご確認ください。

以上が、法定相続情報一覧図の原本還付についての解説となります。

なお、法定相続情報証明制度を利用する場合、
法定相続情報一覧図以外にも、申出書の作成や、
出生から死亡までの戸籍謄本等など、
6つの書類を必ず用意しなければなりません。

制度の利用に必要な6つの書類については、
法定相続情報証明制度の必要書類を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等については、
出生から死亡までの戸籍謄本とは?」を参照ください。

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また、法定相続情報一覧図をご自分で取得される方は、
法定相続情報一覧図を自分で取得する方法」で、
手順と流れをくわしく解説しています。

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