委任による代理人が法定相続情報証明制度の手続きを行う場合、
委任されたことを証明する委任状が必要になります。
委任状は、通常、相続人(申出人)又は代理人が作成する書面です。
ただ、その前に「委任状はどんな様式で何を記載するべきか?」
「委任状が無効にならないために注意すべきことは何か?」
について正確に知っておく必要があるのです。
もし、委任状の記載内容に抜かりや間違いがあれば、
その委任状は無効になってしまいます。そこで・・・
そこで、法定相続情報証明制度の委任状について、
相続専門の行政書士が、次の順番で、
具体的にわかりやすく解説いたします。
この記事を閲覧することで、委任状の様式と記載例、
委任状の作成で注意すべきことが全てわかります。

行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士。
主な取扱い専門分野:遺産相続手続き全般。
経歴:開業以来21年間、相続手続きに関する業務を全国対応で行ってます。
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委任状の様式
法定相続情報証明制度の委任状の様式は、
下図1のとおりです。
委任状は、A4サイズの普通紙を縦にして作成します。
すべてパソコンなどで作成して、
プリンターで印刷しても良いですし、
すべて手書きで作成してもかまいません。
ただし、委任者の住所と氏名についてのみは、
記名でも良いですが、委任者の自署が望ましいです。
委任者の住所と氏名は、記名(印字など)でも有効ですが、
委任者本人が、委任状の内容を確認して、
住所と氏名を自署することが望ましいということです。
もし、委任者が高齢で、かなり震えた文字になったとしても、
なんとか読める文字なら問題ありません。
委任状の記載例
下図2の赤枠内にそれぞれ記入が必要です。
赤枠内の記入にはそれぞれ注意すべきことがあり、
注意していないと委任状が無効になることもあります。
赤枠内の記入で注意すべきことについては、
下記「委任状が無効にならないための4つの注意点」を、
かならずご確認ください。
委任状の様式をダウンロード・印刷するには?
法定相続情報証明制度の委任状の様式(白紙)を、
下記リストからご自由にダウンロードしてご使用下さい。
Word(ワード)とPDFの2つの形式をご用意しています。
委任状が無効にならないための4つの注意点
委任状が無効にならないために、
次の(1)~(4)の4つの注意点を、
それぞれご説明致します。
(1)代理人の住所と氏名の記入についての注意点
まず、下図3のように、タイトル(委任状)の下には、
代理人の住所と氏名を記入します。
親族と専門家以外の方の住所と氏名を記入しても、
その委任状は無効になってしまいます。
法定相続情報証明制度を利用する場合、
委任による代理人になれるのは、
親族又は専門家(行政書士などの資格者)のみです。
法定相続情報証明制度の利用で代理人になれる人については、
「法定相続情報証明制度の代理人になれる人は?」を参照下さい。
そして、委任状の代理人の住所と氏名欄には、
親族が代理人の場合は、
その親族の住民票に登録している住所と氏名を記入します。
専門家(行政書士などの資格者)が代理人の場合は、
登録している事務所の住所と専門家の氏名を記入します。
もし、登録してない住所や氏名を記入してしまうと、
その委任状は無効になるので注意が必要です。
(2)希望の交付通数の記入についての注意点
下図4のように、
希望する法定相続情報一覧図の写しの交付通数を記入します。
つまり、代理人に取得してほしい通数を記入するのです。
ただ、委任状に記入した交付通数より多い通数は、
その委任状では取得できないので注意が必要です。
代理人に取得してほしい通数を委任状に記入した場合、
法定相続情報証明制度の手続きのときに、
それより多くの通数を交付してもらえないということです。
(3)被相続人の住所氏名、死亡年月日の記入についての注意点
下図5のように、被相続人(亡くなった方)の最後の住所氏名、
死亡年月日については、亡くなった方の戸籍謄本等や、
住民票の除票(又は戸籍の附票)の記載のとおり記入します。
もし、被相続人の戸籍謄本等の内容と違っていれば、
委任状が無効になってしまいます。
なお、被相続人の最後の住民票の除票も、戸籍の附票も、
どちらも廃棄などで取得できなかった場合にのみ、
被相続人の最後の本籍を記入することになります。
(4)委任者の住所と氏名の記入についての注意点
下図6のように、委任者の住所と氏名を記名(印字)するか、
委任者本人が自署で記入します。
委任者の住所氏名は、委任者本人の自署が望ましく、
委任者の押印は必要ありません。
委任状には、以前までは委任者の押印が必要でしたが、
法定相続情報証明制度について押印の廃止が決まり、
令和3年4月1日から委任者の押印も必要なくなりました。
ただ、委任者の押印があっても特に問題ないので、
実務的には、押印しても、押印しなくても、
どちらでも良いということです。
そして、法定相続情報証明制度では、委任状の他にも、
「申出書」の申出人又は代理人の押印や、
「法定相続情報一覧図」の作成者の押印についても不要となっています。
委任者の住所と氏名を確認できる公的書類と、
委任者の住所と氏名が一致している必要があります。
委任者は、法定相続情報証明制度の申出人となる人です。
そして、申出人の住所と氏名を確認できる公的書類が、
必ず用意する書類の1つとなっています。
そのため、委任状に記入する委任者の住所と氏名は、
委任者の住所と氏名を確認できる公的書類と、
一致している必要があるということです。
また、委任した年月日については、
印字されたものでも良いのですが、
できれば、委任者本人に書いてもらう方が良いです。
委任者本人が年月日も記入すれば、
委任者が委任状の内容を確認して、
代理人に委任した年月日が明確になるからです。
以上、法定相続情報証明制度の委任状について解説致しました。
なお、法定相続情報証明制度の利用を代理人が行う場合、
委任状以外にも、「申出書」や「法定相続情報一覧図」、
「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等」など、
6つの書類を必ず用意しなければなりません。
制度の利用に必要な6つの書類については、
「法定相続情報証明制度の必要書類」で、
くわしく解説しています。
「申出書」や「法定相続情報一覧図」については、
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」、
「法定相続情報一覧図とは?」を参照ください。
もし、法定相続情報証明制度の利用でお困りの方は、
「法定相続情報証明制度の利用で困っていませんか?」で、
楽に解決する方法もあります。
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