
行政書士・土地家屋調査士 寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
保有資格:行政書士、土地家屋調査士。
取扱い分野:法定相続情報証明制度など相続関連手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
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法定相続情報一覧図を自分で取得する方法としては、
次の1~5の手順になります。
- 相続に必要な戸籍謄本等を役所で取得する。
- 法定相続情報証明制度の必要書類を用意する。
- 必要書類を法務局に提出する。
- 戸籍謄本などの必要書類を法務局が審査する。
- 法務局から「法定相続情報一覧図の写し」等を受け取る。
ただ、上記1~5の大まかな手順だけでは、
「具体的に誰の戸籍を、どこで取得すれば良いのか?」
「具体的にどんな書類を準備作成すれば良いのか?」
「どこの法務局にどんな方法で提出すれば良いのか?」
などいくつかの細かい判断ができません。
そこで、この記事では、上記1~5の手順について、
具体的にどうすれば良いのかまでわかるように、
相続専門の行政書士が、順番にくわしくご説明致します。
この記事を閲覧することで、
法定相続情報一覧図を自分で取得する方法がわかります。
1. 相続に必要な戸籍謄本等を役所で取得する。
手順として最初に行う作業は、
相続に必要な戸籍謄本等を、
市区町村の役所で取得する作業です。
この作業は、法定相続情報証明制度を利用してもしなくても、
亡くなった方の銀行預金や不動産などの相続手続きを行う場合、
最初にかならず必要な作業になります。
ただ、亡くなった方と相続人との関係によって、
相続に必要な戸籍謄本等の範囲が大きく違います。
まず、共通してかならず必要な戸籍謄本等としては、
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本等と、
相続人全員の戸籍謄本です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等については、
死亡記載のある戸籍謄本(又は除籍謄本)1つだけでなく、
次のようにいくつかの除籍謄本と原戸籍を含みます。

もし、被相続人の兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合には、
被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本等も、
上図1の戸籍謄本等に加えてさらに必要になります。
戸籍謄本や除籍謄本、原戸籍(はらこせき)については、
市区町村役所でのみ取得できます。
もし、相続に必要な戸籍謄本等が1つでも足りない場合は、
法定相続情報が正確に確認できないため、
不足分の戸籍謄本等を追加提出しないと、手続きを完了できません。
ちなみに、法定相続情報証明制度を利用しなくても、
相続に必要な戸籍謄本等が不足していれば、
銀行などの相続手続き先から、
そろうまで何度でも追加提出を求められることになります。
法定相続情報一覧図に住所を記載する場合は、
住民票の写し(又は戸籍の附票)も必要になります。
下図2のように、
法定相続情報一覧図に各相続人の住所を記載する場合は、
相続人の住民票の写し(又は戸籍の附票)も役所で取得する必要があります。

逆に、法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載しない場合は、
相続人の住民票の写し(又は戸籍の附票)は必要ありません。
ただ、不動産の相続手続きを予定している場合は、
法定相続情報一覧図に各相続人の住所を記載しておいた方が、
あとあと困ることはないでしょう。
住所を記載した場合と、住所を記載しなかった場合については、
「法定相続情報一覧図に住所の記載は必要?」で、
くわしく解説しています。
2. 法定相続情報証明制度の必要書類を用意する。
法定相続情報証明制度の利用に必要な書類として、
基本的に、次の6つの書類の準備や作成が必要です。
- 「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等」の準備
- 「被相続人の住民票の除票」の準備
- 「相続人全員の戸籍謄本又は戸籍抄本」の準備
- 「申出人の住所と氏名を確認できる公的書類」の準備
- 「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の作成
- 「法定相続情報一覧図」の作成
法定相続情報証明制度で必要な書類については、
「法定相続情報証明制度の必要書類を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。
なお、上記の申出書と、法定相続情報一覧図については、
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」と、
「法定相続情報一覧図とは?」でも解説しています。
申出人の住所と氏名を確認できる公的書類については、
「法定相続情報証明制度で本人確認は?」を参照ください。
また、代理人が申出をする場合には、
上記の書類に加えて、
次の2つの書類の作成と準備も必要になります。
- 「委任状」の作成
- 「代理人の本人確認書面」の準備
委任状の様式や記載例、
委任状が無効にならないための4つの注意点については、
「法定相続情報証明制度の委任状の様式と記載例」で、
くわしく解説しています。
3. 必要書類を法務局に提出する。
法定相続情報証明制度の必要書類がすべて整えば、
法務局に書類を提出します。
ただし、どこの法務局でも良いわけではありません。
法定相続情報証明制度の利用の申出をできる法務局は、
次の4つの法務局のみです。
- 被相続人(亡くなった方)の最後の本籍地を管轄する法務局
- 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
- 申出人の住所地を管轄する法務局
- 被相続人名義の不動産の所在地を管轄する法務局
上記4つの法務局の内から、
申出人(相続人)が自由に選択することになります。
ただ、上記4つの法務局が、
すべて同じ法務局になる場合もあります。
たとえば、被相続人(亡くなった方)の最後の本籍地と住所地、
申出人の住所地、被相続人名義の不動産のある所在地が、
すべて同じ市町村にある場合です。
逆に、上記4つの法務局が、
すべて異なる法務局になる場合もあるのです。
4つの法務局が同じ場合には選択の余地はありませんが、
異なる場合には、どの法務局に提出したら良いのか、
迷うことがあります。
どの法務局に提出したら良いのかは、
何を重視するかによって、自然に決まってきます。
たとえば、書類を提出した後で、補正や追加提出の心配があり、
その作業を郵送ではなく、直接窓口で行いたい場合には、
申出人の住所地を管轄する法務局が良いと言えます。
逆に、補正や追加提出があっても、
郵送ですべて解決したい場合には、
遠方の法務局でも良いでしょう。
また、制度利用の手続き完了後、5年以内であれば、
追加で必要な枚数分の「法定相続情報一覧図の写し」を、
法務局から再交付してもらうことが可能です。
ただ、「法定相続情報一覧図の写し」の再交付は、
最初に必要書類を提出した法務局でしか再交付してもらえません。
そのため、再交付が必要になる可能性のことも考えた上で、
提出先の法務局を決めておくと良いです。
「法定相続情報一覧図の写し」の再交付については、
「法定相続情報一覧図の写しの再交付の方法」で、
くわしく解説しています。
法務局への書類の提出方法としては、
法務局の窓口に直接出向いて提出する方法と、
郵送で提出する方法があり、申出人(相続人)が選択できます。
もし、郵送提出を選択した場合、
郵便局の書留やレターパックを利用して、
追跡できる形で郵送提出することをお勧めします。
また、完了書類の受け取りについても、
郵送で受け取ることが可能です。
その場合には、法務局に書類を提出する際に、
切手を貼った返信用封筒またはレターパックも一緒に同封して、
宛名に申出人の本人確認書面と同じ住所・氏名を記入しておく必要があります。
返送用封筒についても、
追跡可能な郵便局のレターパックなどを利用した方が良いです。
なお、郵送による制度の利用方法については、
「法定相続情報証明制度の利用を郵送で行う方法」で、
くわしく解説しています。
4. 戸籍謄本などの必要書類を法務局が審査する。
法務局の窓口に出向いて書類を提出した場合も、
郵送で書類を提出した場合も、法務局内での書類審査には、
通常、1週間~10日ほどかかります。
もし、書類に不備や不足があれば、
法務局から修正や追加提出を求められますので、
申出人 又は 代理人が対応しなければなりません。
法務局から書類の修正や追加提出を求められても、
申出人 又は 代理人が対応しなかった場合、
申出日から3か月を経過したあとで、
法務局が書類を廃棄することもあります。
そのため、法務局での書類審査期間中は、
法務局からの電話連絡があるかもしれないので、
電話連絡を受け取れるように注意が必要です。
なお、法定相続情報証明制度の交付までの期間についてや、
交付までの期間中に注意すべきことについては、
「法定相続情報証明制度」交付までの期間は?を参照ください。
5. 法務局から「法定相続情報一覧図の写し」等を受け取る。
法務局での書類審査が無事に終わりますと、
法務局の窓口で書類の受け取りの場合は、
法務局から申出人 又は 代理人の電話番号に連絡が来ます。
連絡を受けてから、申出人 又は 代理人が法務局に出向いて、
「法定相続情報一覧図の写し」や、添付書類を受け取ります。
なお、法務局の窓口で受け取る場合には、
申出人又は代理人であることの本人確認のため、
身分証の提示が必要です。
もし、郵送で受け取りの場合は、
法務局からの電話連絡はなく、返送用封筒にて、
そのまま申出人 又は 代理人の住所宛てに返送されてきます。
ちなみに、「法定相続情報一覧図の写し」というのは、
下図3の具体例のように、法定相続情報一覧図の下部分に、
法務局名や、法務局の印が記載された書面のことです。

亡くなった方の銀行預金や不動産などの相続手続きの際、
相続に必要な戸籍謄本等の提出の代わりに、
この「法定相続情報一覧図の写し」1枚の提出で良くなるのです。
「法定相続情報一覧図の写し」については、
「法定相続情報一覧図の写しとは?」で、
くわしく解説しています。
以上が、法定相続情報一覧図を自分で取得する方法について、
大まかな流れと細かい判断のすべてとなります。
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