行政書士・土地家屋調査士 寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
保有資格:行政書士、土地家屋調査士。
取扱い分野:法定相続情報証明制度など相続関連手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
行政書士・土地家屋調査士のプロフィールはこちら
相続のため、法務局で法定相続情報一覧図を取得したいけど、
必要な書類がよくわからない、
という人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、法定相続情報一覧図の必要書類について、
法定相続情報一覧図の作成・取得業務を行っている行政書士が、
わかりやすく解説致します。
この記事をすべて閲覧することで、
法務局の法定相続情報一覧図の取得に必要な書類がわかります。
【この記事の内容を動画で見る】
この記事と同じ内容を、【動画】でも観て頂けます。
記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
法定相続情報一覧図の取得に必要な6つの書類
法務局で法定相続情報一覧図を取得するには、
基本的に、次の6つの書類が必要になります。
- 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
- 法定相続情報一覧図
- 被相続人の出生から死亡までの連続した除籍謄本等
- 被相続人の最後の住所を証する書面
- 相続人の戸籍の謄本、抄本又は記載事項証明書
- 申出人の住所及び氏名を確認できる公的証明書
それぞれ具体的にどんな書類なのかを、
順番に見ていきましょう。
1.法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」は、
下図1の様式 又は これに準ずる様式によって、
申出人又は代理人が作成する書面になります。
被相続人1人につき、この申出書が1枚必要となり、
太枠内の各事項の内容を、記入しなければなりません。
なぜなら、不動産登記規則第247条2項で、
「申出は、次に掲げる事項を内容とする申出書を、
登記所に提供しなければならない」と定められているからです。
”次に掲げる事項”というのは、次のすべての内容のことです。
- 申出人の氏名、住所、連絡先及び被相続人との続柄
- 代理人が申出する場合は、代理人の氏名又は名称、
住所及び連絡先、並びに代理人が法人ならその代表者の氏名 - 利用目的
- 交付を求める通数
- 被相続人名義の不動産がある場合は、不動産の所在事項又は不動産番号
- 申出の年月日
- 送付によって書面の返却を求める時はその旨
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」の様式では、
これらの事項の内容が、
すべて記載される様式になっています。
なお、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の書き方と、
記載例、最新様式のダウンロードについては、
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を参照下さい。
2.法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図は、下図2のような書面のことで、
法務局が作成する書面ではなく、申出人、
又は代理人が作成する書面になることに注意が必要です。
被相続人1名につき、
このような法定相続情報一覧図が1枚必要になります。
法定相続情報一覧図に記載すべき内容については、
不動産登記規則第247条1項で、
「法定相続情報を記載した書面」と定められています。
法定相続情報というのは、
次の1と2のすべての内容のことです。
- 被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
- 相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄
そして、「法定相続情報一覧図の作成年月日と申出人を記載し、
作成した申出人又は代理人が記名したものに限る」と、
不動産登記規則第247条3項1号で定められています。
なお、被相続人の配偶者の有無や、子供の有無、
兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースなど、
ケースによって法定相続情報の記載の仕方に、
違いがあることに注意が必要です。
そのため、各ケースの法定相続情報一覧図の見本については、
「法定相続情報一覧図の見本とテンプレート」を参照下さい。
法定相続情報一覧図の作成方法については、
「法定相続情報一覧図の作成方法・手書きOK?」で、
くわしく解説しています。
もし、自分で作成が難しいようでしたら、
行政書士などの専門家に委任(依頼)することも可能です。
法定相続情報証明制度の代理人については、
「法定相続情報証明制度の代理人について解説!」を参照下さい。
3.被相続人の出生から死亡までの連続した除籍謄本等
「被相続人の出生から死亡までの連続した除籍謄本等」は、
不動産登記規則第247条3項2号で、
申出書に添付しなければならない書類として定められています。
不動産登記規則第二百四十七条3
前項の申出書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。
二 被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書
引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記規則 」. (参照 2023-4-22)
具体的には、下図3のような、被相続人の戸籍謄本、
除籍謄本、改製原戸籍謄本の全ての戸籍のことです。
このように、被相続人の出生時からの戸籍には、
除籍謄本や原戸籍がそれぞれいくつも存在しますが、
これらすべての戸籍を、市区町村役所で取得する必要があります。
また、代襲相続がある場合には、被代襲者についても、
被相続人と同じように、出生時からの除籍謄本等が必要です。
そして、被相続人や被代襲者の除籍謄本などを、
市区町村役所で取得する際には、
次の2点に注意しなければなりません。
- 抄本ではなく、すべて謄本(全部事項証明書)を取得すること。
- 戸籍が廃棄 又は 焼失していた場合は、その旨の証明書も取得すること。
なぜなら、被相続人や被代襲者の戸籍はすべて謄本が必要で、
もし、廃棄や焼失していれば、除籍等の謄本を交付できない旨の
市区町村長の証明書が必要とされているからです。
なお、被相続人の出生時からの戸籍や、
古い戸籍が役所で廃棄又は焼失していた場合については、
「出生から死亡までの戸籍謄本とは?」で、
くわしく解説しています。
4.被相続人の最後の住所を証する書面
「被相続人の最後の住所を証する書面」とは、
具体的には、次の2つのいずれかの書面のことです。
- 被相続人の最後の住民票の除票
- 被相続人の最後の戸籍の附票
まず、下図4のような住民票の除票は、
被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役所で取得できます。
次に、下図5のような戸籍の附票は、
市区町村役所で取得できる書面です。
なぜ、住民票の除票、又は戸籍の附票が必要かと言えば、
申出書や法定相続情報一覧図には、
被相続人の最後の住所を記載する必要があるからです。
そして、申出書や法定相続情報一覧図に記載された住所が、
正しい住所であることを証明するために、
被相続人の住民票の除票、又は戸籍の附票が必要なのです。
ただ、被相続人の住民票の除票も、戸籍の附票も、
市区町村役所で廃棄されていて、取得できない場合があります。
その場合、申出書や法定相続情報一覧図には、
被相続人の最後の住所の記載の代わりに、
被相続人の最後の本籍を記載することになっています。
5.相続人の戸籍の謄本又は抄本
相続人の戸籍の謄本、又は抄本というのは、
具体的には、次のいずれかの書面のことです。
- 相続人の戸籍謄本 又は 戸籍の全部事項証明書
- 相続人の戸籍抄本 又は 戸籍の個人事項証明書
たとえば、相続人Aさんは、戸籍の全部事項証明書で、
相続人Bさんは、戸籍抄本、といった組み合わせでも良く、
相続人の全員分、各自1通ずつ必要ということです。
ちなみに、下図6は、戸籍の全部事項証明書の例です。
また、「相続人の戸籍の謄本、抄本又は記載事項証明書」で、
注意が必要なのは、次の3点です。
- 相続放棄をしている人の分も必要
- 廃除された人の分も必要
- 被相続人の死亡日より、後の日付のものが必要
もし、相続人の中に廃除された人がいる場合、
法定相続情報一覧図には、その人の氏名などは記載しませんが、
廃除されていることを証明するために、戸籍が必要になります。
また、被相続人の死亡日以前に取得した戸籍が手元にあっても、
被相続人の死亡後に、
役所で取得した相続人の戸籍謄本(全部事項証明)、
または、戸籍抄本(個人事項証明)が必要になります。
6.申出人の住所及び氏名を確認できる公的証明書
「申出人の氏名及び住所を確認できる公的証明書」というのは、
具体的には、次の4つの内、いずれかの書面のことです。
住民票の写し の原本 | 戸籍の附票 の原本 | 運転免許証 のコピー | 個人番号カード のコピー |
これら4つの内から、自由に1つを選択できます。
注意すべきことは、運転免許証のコピーを選択した場合、
表面と裏面の両方のコピーが必要なことです。
また、個人番号カードのコピーを選択した場合には、
表面のみコピーしたものでかまいません。
ただし、運転免許証、又は個人番号カードのコピーの場合は、
下図7のように、余白に手書きで良いので、
「これは原本と相違ありません」の旨と、
申出人の氏名を、ペンで記入する必要があります。
なお、法定相続情報一覧図の申出の際の原本還付については、
「法定相続情報一覧図で原本還付されるのは?」を参照下さい。
ケースによって必要になる書類
法務局で法定相続情報一覧図を取得する場合、
ケースによっては、次の書類も必要になります。
- 代理人が申出する場合のみ、代理人の権限を証する書面
- 法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載した場合のみ、その住所を証する書面
それぞれ具体的にどんな書類なのかを、
順番に見ていきましょう。
代理人が申出する場合のみ、代理人の権限を証する書面
代理人の権限を証する書面というのは、
誰が代理人になるのかによって、
具体的な必要書類に違いがあります。
まず、申出人の親権者又は未成年後見人が代理人になる場合は、
「親権者又は未成年後見人であることのわかる戸籍謄抄本、
または、戸籍の記載事項証明書」が必要になります。
申出人の成年後見人・保佐人・補助人が代理人になる場合は、
「後見登記等ファイルの登記事項証明書」が必要で、
保佐人・補助人の場合は、「代理権目録付きのもの」が必要です。
不在者財産管理人・相続財産管理人が代理人になる場合は、
「管理人が選任された審判書」が必要になります。
次に、委任による代理人によって申出をする場合は、
下図8のような委任状が必要になります。
ただ、委任状に加えて、親族が代理人になる場合と、
士業など資格者が代理人になる場合とで、
それぞれ次の書類も必要になります。
申出人の親族が代理人になる場合には、
「申出人との親族関係がわかる戸籍の謄抄本、
又は戸籍の記載事項証明書」も必要です。
戸籍法第10条2第3項の者(行政書士等の士業)が代理人の場合、
資格者代理人の身分証明書の写しも必要で、
代理人が法人の場合は、「法人の登記事項証明書」が必要になります。
行政書士等の士業に委任(依頼)した場合は、
士業の方で委任状も作成してもらえますし、
代理人の身分証明書の写しも、士業の方で用意します。
なお、法定相続情報証明制度の委任状の様式と作成方法、
委任状に印鑑は必要かどうか、再交付の委任状などについては、
「法定相続情報一覧図の委任状を徹底解説!」を参照下さい。
法定相続情報証明制度の代理人については、
「法定相続情報証明制度の代理人について解説!」で、
くわしく解説しています。
法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載した場合のみ、
その住所を証する書面
法定相続情報一覧図に、相続人の住所を記載した場合、
その住所を証する書面として、
具体的には、次の3つの内、いずれかの書面が必要になります。
- 相続人の住民票の写し
- 相続人の住民記載事項証明書
- 相続人の戸籍の附票
なお、法定相続情報一覧図に、
相続人の住所を記載するかどうかは、
申出人(相続人)が、自由に決めることができます。
ただ、法定相続情報一覧図には、
できれば、相続人全員の住所を記載しておいた方が安心です。
なぜなら、法定相続情報一覧図に相続人の住所の記載が無い場合、
相続手続きの際に、相続人の「住民票の写し」などを、
相続手続き先に、別途提出しなければならなくなることもあるからです。
なお、法定相続情報一覧図に、相続人の住所を記載する場合と、
記載しない場合の違いについては、
「法定相続情報一覧図に住所の記載なしの場合と住所を記載した場合の違い」で、
くわしく解説しています。
なお、法定相続情報証明制度の利用を自分でされる方は、
「法定相続情報一覧図は自分でできる?自分でする手順」で、
くわしく解説しています。
もし、法務局の法定相続情報一覧図の取得でお困りの方は、
「法務局の法定相続情報一覧図の取得で困っていませんか?」で、
段階的な解決方法があります。
このページを読んだ人は、次の関連性の高いページも読んでいます。