この記事の監修者

行政書士・土地家屋調査士 寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
保有資格:行政書士、土地家屋調査士。
取扱い分野:法定相続情報証明制度など相続関連手続き全般。

経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
行政書士・土地家屋調査士のプロフィールはこちら

被相続人(亡くなった方)の住所は、
法定相続情報一覧図に必ず記載しなければなりません。

ただ、相続人の住所は、
法定相続情報一覧図に記載しても良いですし、
記載しなくてもかまいません。

つまり、被相続人の住所の記載は必須ですが、
相続人の住所を記載するかどうかは、
申出人(または代理人)の任意となっているのです。

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載した場合と、
相続人の住所を記載しなかった場合では、
添付書類や、あとあとの相続手続きの際に違いが出てきます。

そこで、それぞれの場合の違いについてと、
被相続人の住所の記載について、次の順番で、
相続専門の行政書士が解説致します。

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このページでは、法定相続情報一覧図に、
相続人の住所を記載した方が良いかどうかがわかります。

相続人の住所を記載した場合どうなる?

相続人全員の住所を記載した場合の法定相続情報一覧図の例
(図1:相続人全員の住所を記載した場合の法定相続情報一覧図の例)

法定相続情報一覧図に、相続人の住所を記載した場合には、
相続人の「住所を証明する書面」の添付が必要になります。

相続人の「住所を証明する書面」とは、
具体的には、相続人の「住民票の写し」、
または、相続人の「戸籍の附票」のことです。

相続人の「住民票の写し」は、
その方が住んでいる地域の役所で取得できる書面です。

相続人の「戸籍の附票」は、
その方の戸籍謄本を取得するときに、
役所で同時に取得できる書面になります。

相続人の住所は記載した方が良い?

遺産の種類によって、住所を記載した方が良い場合もあれば、
住所を記載しなくても良い場合があります。

相続人全員の住所を記載した方が良い場合とは、
次の2つの手続きの内、
どれか1つでも今後予定している場合です。

  • 法務局での不動産(土地や家屋)の相続手続き(名義変更)
  • 家庭裁判所での遺言書の検認手続き(遺言書がある場合のみ)

なぜ、相続人全員の住所を記載した方が良いかと言えば、
少なくとも上記2つの手続きでは、
相続人全員の「住所を証明する書面」が必要だからです。

もし、法定相続情報一覧図に相続人の住所の記載がなければ、
手続きの際に別途添付書類として、相続人の「住民票の写し」、
または、「戸籍の附票」を添付しなくてはならなくなります。

逆に、法定相続情報一覧図に相続人全員の住所の記載があれば、
相続人の「住所を証明する書面」の添付は必要なくなるからです。

「住民票の写し」と「戸籍の附票」どっちが良い?

「住民票の写し」でも、「戸籍の附票」でも、
発行手数料と、取得するときの手間の違いのみのため、
どちらを取得しても特に大きな違いはありません。

「住民票の写し」の発行手数料は、
役所によって1通300円~450円と幅がありますが、
「戸籍の附票」は、ほとんどの役所が1通300円です。

ただ、法定相続情報証明制度を利用する場合には、
相続人全員の戸籍謄本が必要なので、戸籍謄本を取得する際に、
「戸籍の附票」も同時に取得すると手間がかかりません。

「住民票の写し」や「戸籍の附票」の発行日はいつでも良い?

相続人の「住民票の写し」や「戸籍の附票」は、
被相続人の死亡後に発行されたものが必要です。

被相続人の死亡前に役所で取得していた「住民票の写し」や、
「戸籍の附票」が手元にあっても、通常、使用不可ですので、
被相続人の死亡日よりあとのものを、役所で取得する必要があります。

被相続人の死亡日よりあとで発行されていれば良く、
使用期限などの定めは特にありません。

引き続き、下記で、
相続人の住所を記載しなかった場合どうなる?」と、
被相続人の住所はいつの住所を記載する?」を解説しています。

なお、法定相続情報証明制度を利用する場合、
法定相続情報一覧図だけでなく、申出書や、
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等も必要です。

法定相続情報証明制度の利用に必要な書類については、
法定相続情報証明制度の必要書類を徹底解説!」で、
くわしく解説しています。

相続人の住所を記載しなかった場合どうなる?

相続人の住所の記載がない法定相続情報一覧図の例
(図2:相続人の住所の記載がない法定相続情報一覧図の例)

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載しなかった場合、
法定相続情報証明制度を利用する際の手続きで、
相続人の「住所を証明する書面」を添付する必要がなくなります。

あとで何か困ることはある?

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載しなかった場合には、
相続手続きの際に、相続人の「住所を証明する書面」を、
別途添付しなければならなくなることがあります。

特に、次の2つの手続きでは、
相続人の「住所を証明する書面」を、
必ず別途添付しなければならなくなります。

  • 法務局での不動産(土地や家屋)の相続手続き(名義変更)
  • 家庭裁判所での遺言書の検認手続き(遺言書がある場合のみ)

なお、上記2つの手続き以外でも、手続き先によっては、
相続人の「住所を証明する書面」が、
別途必要になることもあるので注意が必要です。

そのため、あとあとの相続手続きのことまで考えると、
法定相続情報一覧図には、
相続人全員の住所を記載しておいた方が安心と言えます。

相続人全員の住所を記載していれば、
あとあと住所のことで困ることは無いからです。

なお、法定相続人が子供、両親、又は兄弟姉妹(甥姪)の場合、
各ケースの法定相続情報一覧図の見本やテンプレートは、
法定相続情報一覧図の見本とテンプレート集」をご確認下さい。

被相続人の住所はいつの住所を記載する?

被相続人(亡くなった方)の最後の住所については、
法定相続情報一覧図に必ず記載しなければなりません。

被相続人の最後の住所とは、
「住民票の除票」、または、
「戸籍の附票」に載っている最後の住所のことです。

そして、最後の住所を証明するために、
被相続人の「住民票の除票」、または、「戸籍の附票」を、
添付書類として提出することになります。

「住民票の除票」や「戸籍の附票」は、
市区町村の役所で発行される公的な書面になるため、
住所を証明することができるからです。

「住民票の除票」と「戸籍の附票」どっちが良い?

亡くなった方の遺産に不動産(土地や建物)があれば、
「戸籍の附票」を取得した方が良いと言えます。

なぜなら、「戸籍の附票」には、「住民票の除票」よりも、
亡くなった方の住所の多くが載っていることがあるからです。

逆に、亡くなった方の「住民票の除票」は、
普通に役所で取得すると、
亡くなった方の最後の住所しか記載されません。

もし、「住民票の除票」を役所で取得する際に、
1つ前の住所も記載してほしい旨を伝えれば、
1つ前の住所も記載はされます。

しかし、「戸籍の附票」でしたら、普通に取得しても、
亡くなった方の過去の住所と最後の住所が、
その戸籍ができた当時からすべて一覧で記載されるからです。

なぜ、戸籍の附票の方が良い?

なぜ、「戸籍の附票」の方が良いのかと言えば、
もう1つの理由があります。

亡くなった方が不動産を所有している場合、
通常、法務局で不動産の登記(とうき)がされています。

不動産の登記というのは、
その不動産を所有している所有者の住所や氏名などを、
法務局の不動産登記簿に記録することです。

そして、法務局で登記された所有者の住所は、
登記(記録)した時点の過去の住所になっているため、
亡くなった方の最後の住所と違っていることがよくあります。

亡くなった方の不動産の相続手続きでは、
法務局で登記された所有者の住所と、
亡くなった方の最後の住所が一致していない場合、
住所のつながりを証明する書面が必要になります。

そこで、住所のつながりを証明する書面として、
亡くなった方の住所が多く載っている「戸籍の附票」の方が、
不動産の相続手続きでも、対応できる書面になるからです。

なお、法定相続情報証明制度を利用する場合、
「住民票の写し」または「戸籍の附票」だけでなく、
必ず用意する6つの書類と、必要になる場合がある3つの書類があります。

法定相続情報証明制度で必要になる書類については、
法定相続情報証明制度の必要書類を徹底解説!」をご確認ください。

もし、自分で法定相続情報証明制度の利用をお考えの方は、
法定相続情報一覧図を自分で取得する方法」で、
制度の利用手順(進め方)がわかります。

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